子宮筋腫
子宮筋腫とは
子宮筋腫とは、子宮の壁にできる良性の腫瘍(しこり)のことで、がんではありません。30歳以上の女性では約3割に認められるといわれています。女性ホルモン(エストロゲン)の影響で増大し、閉経後に縮小することが多く、必ずしも治療が必要とは限りません。子宮筋腫ができる場所によって、以下の3つの種類に分類することができます。
①粘膜下筋腫:子宮内膜のすぐ下にできる筋腫です。子宮の内部に筋腫ができるため、小さくても生理の量が多くなる(過多月経)・月経の期間が長くなる・不妊の原因になりやすい傾向があります。
②筋層内筋腫:子宮の壁を構成する筋層内にできる筋腫です。最も多いタイプで、ほとんどの場合、筋腫が小さいうちは無症状ですが、大きくなると過多月経、月経痛、貧血などの症状が現れます。
③漿膜下筋腫:子宮の表面を覆う漿膜の下から、子宮の外側にできる筋腫です。自覚症状がないことが多く、筋腫が外側に向かって大きくなると、下腹部にしこりを感じることがあります。
主な症状
①無症状:多くの場合、無症状で経過し、子宮がん検診などで筋腫を指摘されることがあります。筋腫がみつかっても、筋腫の大きさや場所によってはすぐに治療を受けなくても良い場合があります。定期的に筋腫のチェックを行い、経過をみる必要があります。
②月経に伴う症状:過多月経(出血量が多い)・過長月経(期間が長くなる)・月経痛・レバー状の塊
③貧血による動悸・倦怠感・立ちくらみなど
④下腹部にしこりを触れることがある
⑤膀胱や大腸の圧迫による頻尿、便秘、腰痛:大きくなった筋腫が、膀胱や、大腸などの周辺の臓器を圧迫すると、頻尿や排尿困難、便秘、腰痛などの症状を引き起こすことがあります。特に漿膜化筋腫の場合、子宮の外側に向かって大きくなるため、この圧迫症状を引き起こす可能性が高まります。
⑥激しい痛みや発熱:筋腫が急速に大きくなると、血行障害が起こることがあります。それによって筋腫が壊死し始めると激しい痛みや発熱が生じます。また、有茎の漿膜下筋腫で、茎捻転を起こした際も、同様に壊死が生じ、痛みや発熱の症状があります。この場合は、緊急性があるので、早急な受診をおすすめします。
⑦不妊や流産の原因になることもあります:粘膜下筋腫や、大きくなった筋層内筋腫によって、子宮の内側がデコボコに変形することで、受精卵の着床を妨げたり、着床をしても流産しやすくなる可能性があります。
検査方法
超音波検査を用いて筋腫の大きさ・数・位置を確認します。当院では、世界最新の超音波(コニカミノルタ社の「SONOVISTA LX」)を導入しており、小さな筋腫も見逃しません。
治療方針について
子宮筋腫の治療は、妊娠希望、不妊、将来的なライフスタイル、ライフステージなどに合わせた選択が可能です。
①経過観察:筋腫の位置や、サイズ、症状にによっては、定期的な経過観察で様子をみることが可能です。
②薬物による治療:薬物による治療では、筋腫を完全になくすことはできませんが、筋腫による様々な症状の緩和が期待できます。治療には、以下のような薬物が使用されるのが一般的です。
・GnRHアナログ製剤
・ホルモン製剤
・鎮痛剤
・鉄剤
・低用量ピル
GnRHアナログ製剤とホルモン製剤は、女性ホルモンのエストロゲンの分泌を抑え、筋腫を小さくするために用いられます。この治療法は、一時的に閉経している状態を作るため、偽閉経療法とも呼ばれています。
また、鎮痛剤、鉄剤、低用量ピルは、月経痛や貧血などの症状に合わせて服用する場合があります。
③手術療法:筋腫のみを取り除く「筋腫核出術」と、子宮ごと取り除く「子宮全摘術」があります。妊娠のご希望の有無や、年齢などにより治療方法が選択されます。術式は、開腹術、腹腔鏡、子宮鏡、ロボット支援と様々です。当院では、手術療法は行っておりません。手術が必要な場合は、信頼できる病院への紹介も対応しています。
よくある質問Q&A
子宮筋腫は放っておいても大丈夫ですか?
子宮筋腫は良性腫瘍であり、必ずしもすぐに治療が必要とは限りません。症状がなければ経過観察で済む場合も多いです。ただし、筋腫の大きさや場所によっては月経異常・不妊・貧血の原因になることがあるため、定期的な検診が必要です。
子宮筋腫があると妊娠できないでしょうか?
子宮筋腫が必ず不妊の原因になるわけではありません。筋腫の種類や位置によっては妊娠に影響しないことも多いです。ただし、子宮内に突出する「粘膜下筋腫」などは不妊や流産のリスクを高める可能性があり、治療をおすすめすることがあります。
子宮筋腫はがん化することがありますか?
子宮筋腫は良性の腫瘍であり、がん(子宮肉腫)に変化することは極めて稀です。急に大きくなる場合や、更年期以降に増大する場合には、念のため詳しい検査を行うことをおすすめします。
薬で治せますか?
薬で筋腫そのものを完全になくすことはできません。ホルモン療法などで一時的に小さくすることは可能ですが、治療をやめると再び大きくなる傾向があります。症状を和らげる目的で薬を使うことは有効です。